梅一輪の生存報告

初めましてこんにちは。いっしょうけんめい生きてます。

徒然『時間』

人身事故。

 

池袋線の遅延で、池袋線から大江戸線に向かって、たくさんの人が小走りで移動していく。

 

「少し遅れます」と息を切らせながら電話をする女性を横目に、珍しく余裕を持って駅についた私は、ゆっくりと改札を目指していた。

右からも左からも、たくさんの人が追い抜いていく。私を置いて、時間だけが走り去るようだった。

 

今にも止まりそうな速度で歩く私は、この世界の人たちとは生きている時間が違うのだと改めて思う。体の中にある時計の仕組みが違うのだ。

 

あぁ、このペースでは泳げないなぁ。

 

水族館の水槽で、大きい魚が居眠りしている。彼らはいつも、私たちの目線ほどの高さにある岩場の影で、静かに息を潜める。

 

水槽の上の方では、キラキラした小魚たちが目の回るような速さで一心不乱に泳いでいる。

 

私は、岩場の影で眠る魚だ。上に輝く魚群には、なれないのだ。

 

水の底はゆっくりとした時間が流れる。穏やかな水の流れに漂うように、今日も生きる。